A7075(超々ジュラルミン)とは?特徴・強度・A6061との違い

 

「もっと軽く、もっと強く」という要求が出たとき、真っ先に候補に挙がるアルミ合金がA7075です。ただ、A6061から材料を切り替えるだけで部品が良くなるとは限りません。溶接ができない、使用環境によっては割れやすい、アルマイトの色味が既存品とそろわないなど、A7075には知っておくべき弱点があります。

本記事では、アルミ合金鍛造メーカーの義晟工業が、A7075の特徴と強度を数値で整理し、もっとも身近な比較対象であるA6061との違い、鍛造部品で使い分けるときの判断基準を解説します。

A7075とは

A7075は、亜鉛とマグネシウムを主な添加元素とする7000系アルミ合金です。熱処理によってアルミ合金の中でもトップクラスの強度が得られ、日本では一般に超々ジュラルミンと呼ばれています。

JIS(日本産業規格)では「A7075」、海外では「7075」または「AA7075」と表記されます。板材、丸棒、押出材のほか、鍛造品としても使われます。

主な成分

元素A7075A6061
亜鉛(Zn)5.1〜6.1%0.25%以下
マグネシウム(Mg)2.1〜2.9%0.8〜1.2%
銅(Cu)1.2〜2.0%0.15〜0.40%
ケイ素(Si)0.40%以下0.40〜0.8%
クロム(Cr)0.18〜0.28%0.04〜0.35%

A7075の高い強度は、亜鉛とマグネシウムが熱処理で微細な析出物をつくることで生まれます。一方で、銅を1%以上含むことが、耐食性の低さにもつながっています。

A7075の強度:A6061との数値比較

代表的な調質であるT6(溶体化処理後に人工時効)同士で比較します。

項目A7075-T6A6061-T6
引張強さ572 MPa310 MPa
0.2%耐力503 MPa276 MPa
伸び11%12%
ブリネル硬さ150 HB95 HB
疲れ強さ(回転曲げ、5×10⁸回)159 MPa96.5 MPa
密度2.81 g/cm³2.70 g/cm³
縦弾性係数(ヤング率)71.7 GPa68.9 GPa

※ASM Handbookの代表値です。JIS規格の最低保証値とは異なるため、設計には規格値または材料メーカーの保証値をご使用ください。

数値から読み取れるポイントは3つあります。

  1. 強度は約1.8倍

    引張強さ、耐力ともにA6061の約1.8倍です。密度の差は4%程度なので、重さあたりの強度で大きく上回ります。

  2. 硬さと疲れ強さも高い

    硬さはA6061の約1.6倍で、摩耗に強くなります。繰り返し荷重に対する疲れ強さも高い数値です。

  3. 剛性はほぼ同じ

    ヤング率の差は4%程度です。たわみ量で寸法が決まる部品では、A7075に変えても薄肉化はほとんどできません。

3点目は見落とされがちです。A7075で軽量化できるのは、強度で肉厚が決まっている部品に限られます。

A7075の弱点と注意点

溶接に向かない

A7075は、一般的なアーク溶接(TIG・MIG)では溶接割れが起きやすく、溶接構造には向きません。溶接が必要な部品はA6061を選ぶか、ボルト締結などの構造に変える必要があります。

応力腐食割れ(SCC)に注意

A7075-T6は、引張応力がかかった状態で腐食環境にさらされると、応力腐食割れを起こすことがあります。対策として、過時効処理を行うT73調質があります。T73は引張強さが505 MPa程度とT6より1割強下がりますが、応力腐食割れへの耐性が大きく改善します。屋外や融雪剤のかかる環境で使う部品では、T6かT73かを最初に検討してください。

耐食性はA6061より低い

銅を含むため、A6061に比べて腐食しやすい合金です。屋外で使う部品は、アルマイトや塗装で表面を保護するのが前提になります。

アルマイトの色味

A7075もアルマイト処理は可能で、硬質アルマイトにも対応します。ただし、同じ色を指定してもA6061とは色味がずれやすくなります。セット品の一部だけをA7075に変えると、並べたときに色の違いが目立つことがあります。

コストが高い

材料単価がA6061より高く、鍛造できる温度範囲も狭いため、成形に必要な荷重や金型の負担が大きくなります。そのため、鍛造品としてのコストもA6061より上がります。

A7075とA6061の違い:まとめ表

比較項目A7075A6061
強度非常に高い中程度
硬さ・耐摩耗性高い中程度
剛性ほぼ同じほぼ同じ
溶接性不向き良好
耐食性低め(SCCに注意)良好
アルマイト可能(色味に差が出やすい)良好、カラーもきれいに発色
鍛造のしやすさ温度範囲が狭く難しい鍛造しやすい
コスト高い標準

鍛造部品ではどう使い分けるか

A7075が向いている部品

  • スプロケット、チェーンリング:歯面の摩耗に強い硬さが生きます。
  • カラビナ、スナップフック:小さな断面で高い荷重を受けるため、強度の高さがそのまま軽量化につながります。
  • ハイエンドのトップブリッジ、ステム:強度で肉厚が決まる部位を薄くでき、重量を削れます。

A6061が向いている部品

  • ブレーキ・クラッチレバー、ステップ、ペダル:屋外で使われ、カラーアルマイトで見せることが多い部品です。
  • 溶接やかしめを伴う部品:A7075は溶接に向きません。
  • コストと量産性を重視する部品:材料費、鍛造のしやすさの両面で有利です。

判断の目安

部品の条件推奨材料
強度で肉厚が決まり、とにかく軽くしたいA7075
歯面などの摩耗が問題になるA7075
屋外・融雪剤環境で長期間使うA6061(A7075ならT73を検討)
溶接が必要A6061
カラーアルマイトの色をセットでそろえたいA6061
たわみ量で寸法が決まるA6061(A7075にしても薄くできない)

A6061では強度が足りず、A7075ではコストや耐食性が気になる場合は、6066や7050といった中間的な選択肢もあります。合金系ごとの比較は鍛造アルミ合金の選び方:2000系・6000系・7000系で解説しています。

A7075を鍛造で使うメリット

A7075は丸棒や板からの削り出しでもよく使われますが、強度を最大限に生かすなら鍛造が有利です。鍛造では金属の繊維状組織(鍛流線)が部品の形に沿って連続するため、削り出しで組織が切断される場合に比べて、疲労強度の面で有利になります。

一方で、A7075は鍛造できる温度範囲が狭く、温度管理や成形条件の管理が品質に直結します。鍛造後のT6・T73などの熱処理条件も、部品の使用環境に合わせて決める必要があります。削り出しとの違いは鍛造と削り出しの比較、鍛造と鋳造の違いは鍛造と鋳造の違いとは?をご覧ください。

よくある質問

Q. 超々ジュラルミンとA7075は同じものですか?
同じ合金を指すと考えて問題ありません。A7075はJISでの名称で、日本では一般に超々ジュラルミンと呼ばれています。ジュラルミン(A2017)、超ジュラルミン(A2024)と並ぶ呼び名で、その中で最も強度の高い合金です。

Q. A7075は溶接できますか?
一般的なアーク溶接(TIG・MIG)は溶接割れが起きやすく、おすすめできません。溶接が必要な構造ではA6061を選ぶか、ボルト締結などの方法に変更するのが一般的です。

Q. A7075は錆びますか?
A6061より耐食性が低く、屋外では腐食が進みやすい合金です。アルマイトや塗装で表面を保護して使います。引張応力がかかる部品では応力腐食割れにも注意が必要で、耐性を高めたT73調質が選ばれることもあります。

Q. A7075にアルマイト処理はできますか?
できます。硬質アルマイトにも対応します。ただし同じ色を指定してもA6061とは色味がずれやすいため、複数部品の色をそろえたい場合は材料を統一するか、事前に色見本で確認するのが安全です。

Q. A7075の鍛造品はつくれますか?
つくれます。型鍛造で成形した後、T6やT73などの熱処理を行います。ただしA6061に比べて鍛造できる温度範囲が狭く、成形に必要な荷重も大きいため、鍛造品の価格はA6061より高くなります。

まとめ

A7075(超々ジュラルミン)は、A6061の約1.8倍の強度と高い硬さを持つ、アルミ合金の中でもトップクラスの高強度材です。一方で、溶接に向かない、応力腐食割れに注意が必要、アルマイトの色味が変わりやすいといった弱点もあります。強度で肉厚が決まる部品や摩耗が問題になる部品にはA7075、屋外で使うカラーアルマイト部品や溶接を伴う部品にはA6061と、部品の条件で選ぶことが大切です。

YC Forge(義晟工業)は台湾・台中を拠点とするアルミ合金鍛造専門メーカーです。社内コア工程は鍛造成形とサンドブラスト・梱包で、ISO 9001:2015認証を取得しています。熱処理・CNC加工・アルマイト処理は長期契約の協力工場が担当しています。主要顧客は自動車・バイク・自転車・4x4アフターマーケット部品事業者です。MES/QMSシステムにより各ロットの工程データをトレース可能で、ロットレベルの品質管理を実現しています。鍛造経験20年以上。

A7075とA6061のどちらで鍛造するか迷っている場合は、図面と使用環境、想定数量をお知らせください。アルミ鍛造部品のご相談・お見積もりはこちらから、お気軽にお問い合わせください。

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